バルト海に面するロシアの飛び地、カリーニングラード周辺で緊張が高まっている。リトアニアが自国を経由する対露制裁の対象物資の鉄道輸送を止めた問題を巡り、ロシアが猛反発しているためだ。対立が欧州全体に広がる可能性もある。
リトアニアのイングリダ・シモニテ首相は22日、ロシアに反論する動画をツイッターに投稿した。制裁発動後もロシアの鉄道利用者はカリーニングラードまでリトアニア経由で自由に往来でき、ロシアの貨物の約1%しか影響を受けていないと説明。「カリーニングラード封鎖に関するあらゆる話がウソだ」と強調した。
発端となった制裁は欧州連合(EU)が3月に決定した。露産の鉄鋼や金属製品などの域内通過を禁じるもので、6月17日に発動された。ロシア側は「違法な封鎖だ」と反発し、リトアニア国民が痛みを感じる方法で報復すると警告している。
旧ソ連構成国のリトアニアはEU内の対露強硬派で、ウクライナを積極支援しているほか、露産天然ガスの禁輸などより厳しい制裁の導入を求めている。EUは、ロシアがリトアニアに圧力をかける目的で事実を 歪曲わいきょく 化し、意図的に対立をあおっているとみて警戒する。ロイター通信によると、リトアニアのギタナス・ナウセーダ大統領は、ロシアが送電網を遮断する可能性に言及した。
カリーニングラード周辺では、不穏な動きが相次いでいる。今月中旬、デンマーク領海にロシアの軍艦が2度侵入し、エストニアの領空をロシアのヘリが侵犯した。カリーニングラードはロシア海軍のバルト艦隊の拠点で、ロシアが戦略的に重視する。28日にスペインで開幕する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では、バルト3国などの部隊増強が議論になる見通しで、ロシアによる一連の行動はNATO側をけん制する思惑もありそうだ。
原文出處 讀賣新聞