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最後に迫力アップの演説 聴衆が去らない演説 変化をデータで分析


18日間の参院選が終わった。9党首は何を訴え、訴えはどう変化したのか。朝日新聞は各党首の演説を1カ所ずつを取り上げ、自然言語処理技術を使って分析。6月22日の公示日に行った「第一声」と、選挙戦終盤の7月3日、そして9日夜の「最後の訴え」の3回の演説について、内容を比較し、レーダーチャートにまとめた。

分析にあたっては、演説を文字に書き起こし、内容を七つのテーマに分類。朝日新聞社メディア研究開発センター(M研)が自然言語処理のソフトウェア「Sudachi(すだち)」を利用して、文章を単語に分割し、テーマごとの単語数を算出した。総単語数は演説全体で使われた数、レーダーチャートはテーマごとに使われた単語数の割合を示している。分析は山野陽祐、新妻巧朗、尾崎正典が担当した。

選挙戦が始まった当初は、各党首が物価高や節電対策、消費税などが目立ったが、8日に安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件を受け、翌9日の訴えの内容は様々に変わった。

選挙期間中、各党首の演説を取材した記者の批評とともに、演説の変遷を振り返る。

冒頭で丁寧に候補者を紹介した後、新型コロナ対策やロシアによるウクライナ侵攻、物価高を語る。これがの演説の定番だったが、語り口はやや単調。聴衆も合いの手を入れづらいのか、「そうだ!」といった声が上がることは少なかった。

選挙戦の終盤にかけては、物価高への言及が増えた。序盤に盛り込んでいた「国家安全保障戦略」などの言葉は消え、「政策の話を言っても分からない」(官邸幹部)と、聴衆により身近な話を増やした。

野党批判をしないのも、岸田氏の演説の特徴だった。ただ、激戦区では「相手を批判するだけでは、未来を切りひらくことはできない」など、野党を意識したとみられる発言も聞かれた。

こうした街頭演説も最終日の9日に大きく変わった。前日の8日に安倍晋三元首相が銃撃され、死亡。安倍氏と岸田氏は当選同期だった。「安倍内閣の閣僚の一人としても苦楽を共にさせていただきました。長い時間を共にした大切な友人でもありました」。安倍氏への思いを語り、民主主義の重要さを訴えた。

(演説場所=6月22日は福島市、7月3日は東京・渋谷、9日は新潟市)(高木智也、松山紫乃、高橋杏璃)

立憲民主党の泉健太代表は、選挙期間を通じて物価高対策の必要性を強く訴えた。序盤は「小麦価格の引き下げ」を具体策の一番手に挙げていたが、終盤になると、より広範な有権者に響くよう「消費減税」を強調する場面が目立つようになった。

演説のスタイルも少しずつ変化した。もともと「そう思いませんか?」と聴衆に語りかける「問いかけ型」が多い泉氏だが、終盤になると「言い切り型」も織り交ぜるように。7日の新潟県長岡市での演説では、「(岸田政権は)防衛政策をゆがめているんだ!」と絶叫。ようやく、迫力が出てきたと感じた。

訴えるテーマ自体は期間中に大きく変わらなかった。一方で、厳しい選挙情勢が伝わるにつれ、表情は引き締まり、危機感がにじんだ。最終日の演説では、「真剣にもう一度、政権(奪還)を目指して歩みを進めたい」とも。党内でささやかれる代表交代論を牽制(けんせい)しつつ、自身を鼓舞するかのようだった。

(演説場所=6月22日は青森市、7月3日は札幌市、9日は川崎市)(鬼原民幸)

原文出處 朝日新聞