埼玉県議会で自民党議員団が提出した性的少数者(LGBTなど)への理解増進を図る条例案が7日、可決された。性的指向や性自認の尊重は地域の枠にとどまらない重要なテーマであるものの、社会的な合意形成が十分に進んでいるとは言い難いのが現状だ。条例化の動きが各地に波及すれば、権利の衝突に伴う混乱を誘発しかねないと懸念する声も上がっている。
地方自治研究機構によると、性の多様性に関する条例は、人種や出自、職業などとともに包括的に差別を禁じている事例も含めて約50自治体(6月27日時点)で制定されている。今年に入ってからも、東京都江戸川区や神奈川県逗子市など8自治体が制定しており、自治体レベルでの関心の高さがうかがえる。
ただ、性の多様性についての認識は「十分に社会に浸透していない」とする指摘もある。実際、超党派議員らが条例化を目指している栃木県では、県が18歳以上の県民3千人(有効回答率55・5%)に意識調査を昨年行ったところ、48・5%がLGBTの「意味を知らない」「分からない」と回答し、「知っている」(48・0%)を上回った。
条例化によって理解が促されるとの声がある一方、多くの場面で身体的な性別に基づき男女別スペースの区分が現存し、反対論も根強い。条例化は、個人の間で権利の衝突を招きかねないリスクもはらんでいる。
今年1月には大阪市の商業施設で、戸籍上は男性だが、性自認は女性だとする客が女性用トイレに入ったとして建造物侵入容疑で書類送検された。施設には他の客から苦情が寄せられていたという。鉄道の女性専用車両の利用や、学校の保健体育の授業など議論を呼びそうなケースは数多い。
三重県も昨年、条例を施行したが、こうしたトラブルを回避するため、条文を注釈する「解説」を作成。公衆浴場やトイレなどの利用について、性の多様性が「制限される部分もある」などと明記している。
原文出處 產經新聞