東京の地下鉄に、新たな二つの路線が整備される可能性が出てきた。有楽町線の延伸(豊洲駅―住吉駅)と、品川駅―白金高輪駅をつなぐ「品川地下鉄」と呼ばれる延伸計画が進んでいる。
一部は、観光客誘致や混雑緩和につながると地元自治体が要望。国交省が来年度予算の概算要求に費用の一部を盛り込んだ。ただ、コロナ禍で鉄道利用者が減るなか、整備に慎重な意見も少なくない。新線の行方を探った。
有楽町線の延伸は地元の東京都江東区などがかねて望んできた。有楽町線を豊洲駅から、北側にある半蔵門線の住吉駅まで約5キロ延ばす。途中に新駅が二つ造られ、東陽町駅、住吉駅とあわせて有楽町線の駅が四つ増えることになる。
有楽町線の沿線には住宅エリアとして人気の臨海部があり、これを住吉駅を経由して浅草など観光地の東部につなげ、人の流れを増やしたい狙いがある。東陽町駅を通過する東西線の混雑緩和にも効果があるという。事業費は1560億円を見込む。
品川地下鉄は、品川と白金高輪の約2・5キロを結び、所要時間は約4分。羽田空港に近い品川駅と都心へのアクセスを充実させる狙いがある。品川駅はリニア中央新幹線の始発駅でもあり、コロナ収束後、海外からの観光客増加につながるとも期待される。都は「開発の効果が広がり、広域的に品川駅のポテンシャルがある」とみる。事業費は800億円を見込む。
住民からはさまざまな声が
13路線が走り、「完成系」にも見える都内の地下鉄ネットワーク。新路線が誕生すれば08年の副都心線以来となる。
二つの路線に関係する人たちからは様々な声があがっている。有楽町線の延伸について、豊洲駅近くに住む60代の会社員女性は「待ち望んでいた。周囲でも『いつになるんだろう』と期待していた。東陽町まではバスで遠回りだし、観光も便利になる」と歓迎した。
一方で、同駅を通勤で利用する銀行員男性(51)は「選択肢が多いことはありがたいが、コロナで先が見えない中、もし税金や運賃増など負担があるなら、必要ではないと思う」と話す。
品川地下鉄についても、品川駅で聞いた。会社員の女性(46)は「高輪方面まで本数が少ないバスを使うこともあり、ニーズが無いわけではなさそう」。
別の港区の女性(35)は「たまに麻布十番に行くのであれば便利。ただ延伸は最優先事項ではないと思う」とも語った。
コロナ下で利用者が減少する中、新線の誕生にはどんなメリットがあるのか。
原文出處 朝日新聞