新型コロナウイルス感染症が急拡大する地域の医療機関は、「災害」が続くような日々を送り、これまでと同じ医療ができなくなりつつある。救急車もコロナ患者も「断らない」湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)にも異変が起きていた。救急対応で都内有数の国立国際医療研究センター病院(新宿区)では、コロナ患者の受け入れを断らざるをえない事態が始まっている。
自宅療養中の50代、急変
11日夕方。救急患者受け入れを求める救急調整室への1本の電話で、ER(救急外来)に緊張が走った。
「コロナ陽性の50代男性、自宅療養中に急変」。血中の酸素飽和度は酸素吸入が必要な93%を大きく下回る50%、血圧は上が85、下は60という。
心臓に病気もあり、命にかかわる重症とみられた。
搬送を受けることへの迷いはない。
人工呼吸器をつけるため気管挿管をするか、鼻から高流量の酸素を吸入するネーザルハイフローを使うか。スタッフは感染防御のため帽子や靴カバーをつけ、慌ただしく準備を始めた。
入院受け入れ難しく
しかし、入院させるのは難しい。湘南鎌倉総合病院のICU(集中治療室)8床は満床。ECU(救急集中治療室)には、10日に受けたコロナ患者で、呼吸器装着をした50代男性と、同じく体外式膜型人工肺(ECMO〈エクモ〉)を使う40代男性が入院していた。コロナ以外の重症患者もいる。空きはない。
湘南鎌倉総合病院は、県が開設した中等症のコロナ患者向けの臨時医療施設を運営する。昨年から今年8月10日までに1500人以上を受け、現在は90人ほどが入院している。
臨時施設では中等症患者を診て、救急車で運ばれてきたコロナ患者が重症の場合、高度医療機関に移す。患者の受け入れや搬送調整は、県の担当者が担う。県の「神奈川モデル」はそう取り決めている。
だが、高度医療機関のベッドも埋まりつつあった。
原文出處 朝日新聞