乳幼児が重症化しやすい「RSウイルス」が流行している。例年は秋ごろに流行するが、今年は6月下旬に報告数が急増し、過去の年の流行ピークを超えた。感染しても多くは風邪症状で済むが、中には重い肺炎を引き起こし、命にかかわることもある。どんな人がリスクが高く、何に注意をすればよいのか。
国立感染症研究所(感染研)によると、RSウイルスには飛沫(ひまつ)や接触によって感染する。1歳までに50%以上、2歳までにほぼ全員が感染。それ以降も何度も感染するが、大人や健康な子どもは発熱や鼻水、せきなどの軽い風邪のような症状で済むことが多い。
ただ、初めてかかった乳幼児は症状が重くなりやすく、肺炎や気管支炎で入院が必要になることもある。乳幼児の肺炎の約半分はRSウイルス感染症によるものとされている。早産の赤ちゃんや、先天性の心臓、肺疾患などがある子ども、高齢者でも症状が重くなることがあり、注意が必要だ。
感染研がまとめた全国の定点医療機関約3千カ所からの報告によると、6月21~27日の1週間で、定点あたりの報告数は3・87。同じ方法で統計がとられるようになった2018年以降で最多だった19年秋のピークをすでに超えた。地域差があり、富山(8・79)、福井(12・96)、静岡(8・67)、三重(11・88)、和歌山(10・23)、山口(10・98)などが多い。
大同病院(名古屋市)の水野美穂子小児科部長は「受診者は多いが、今は保育園・幼稚園での流行が中心で、重症者はあまり多くない。しかし、今後はより低年齢の乳幼児に拡大していく可能性もあり注意が必要だ」と話す。愛知県内では、5月下旬に定点あたりの報告数がそれまでの年の最高値を超えた。
水野さんによると、RSウイルスは感染が広がりやすい。子どもはマスクを着けるのも難しいため、保育園などでいったん流行すると感染を防ぐには限界がある。治療は対症療法が中心で、鼻水を吸い出すなどの処置をしながら自然治癒を待つことになる。
ただし、特に乳幼児では肺炎を引き起こすなど重症になりやすく、その場合は入院して酸素投与などの呼吸管理が必要になることもある。「はーはー」と呼吸が苦しそう▽せき込んで眠れない▽ミルクを飲まない――といった症状がある場合は、早めの受診を勧めている。
昨年は、このRSウイルス感染症の流行が1年を通じてほぼ確認されないという異例の年だった。定点あたりの報告数は最大で0・35。昨年はほかにもインフルエンザや手足口病など、飛沫や接触でうつるほかのウイルス性の感染症もほとんど流行しなかった。
原文出處 朝日新聞