新型コロナウイルス感染者への対応をめぐり、千葉県選挙管理委員会が苦慮している。療養中の人は外出が認められず、事実上、知事選に投票できない事態になっているからだ。
県によると、入院を除きホテルや自宅で療養するコロナ患者は約620人(19日時点)。患者は原則、10日間程度は外出しないように求められている。
「選挙当日に投票所へ行けない」という有権者のためにあるのが、期日前投票と不在者投票の二つの制度だ。総務省は10日、コロナ対策として「宿泊施設に期日前投票所や不在者投票記載場所を設けた場合には、当該施設における投票が可能」と通知した。
「宿泊施設に投票所、現実的でない」
しかし、「こうした対応は現実的でない」と県選管は言う。ホテルに期日前投票所を設けても、投票できるのはホテルがある自治体に住む人のみ。自宅から離れた地域のホテルで療養する人もおり、投票できる人とできない人が出てしまうという。
不在者投票も厳しい。重い身体障害があるなど外出できない人は郵送で投票できるが、ホテル療養者は原則、対象にならない。総務省の通知に従い、ホテルを「不在者投票記載場所」にしても、投票するには居住地の選管職員がホテルまで来る必要がある。
県選管の担当者は「療養者が多く、対応は難しい。不在者投票を実現するには、公職選挙法かコロナ特措法の改正が必要だろう」と話す。森田健作知事は18日、「国として議論していただきたい」と定例会見で述べた。
千葉大の斉藤愛教授(憲法)は「選挙権は議会制民主主義の根幹に関わる。過去の在外国民選挙権判決などを鑑みると、コロナ患者が投票できるように選管があらゆる手段をとったと立証できない限り憲法違反となる恐れがある」と話す。
原文出處 朝日新聞