過去、夏冬8大会を取材した経験では、現場にいる至福を感じた瞬間は、むしろ競技会場の外にあった。
アテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロの五輪公園で会場をはしごすると、自国の旗を持って家族の応援に向かう一行とすれ違った。ソチではロシア人のボランティアが星条旗を持つ米国応援団に英語で話しかける光景を眺め、東西冷戦に思いをはせた。世界各地から集まった観客がピンバッジを交換する風景は、五輪の風物詩だ。
そこには、単独の世界選手権にはない祝祭感があった。スポーツを通じて人々が交流し、相互理解を深め、平和な社会の推進をめざす。五輪の根本思想「オリンピズム」を味わえた。
それが東京では見られない。世界中からファンが集う「平和の祭典」という理想はかなわない。
原文出處 朝日新聞