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海外での移植手術で臓器売買か、都内NPOが仲介…術後に日本人患者が重篤に


東京都内のNPO法人が仲介した海外での生体腎移植手術で、売買された臓器が使われた疑いのあることが、読売新聞が入手した録音・録画記録とNPO関係者への取材でわかった。ドナー(臓器提供者)は経済的に困難を抱えているウクライナ人で、腎臓の対価は約1万5000ドル(約200万円)だった。手術は途上国で行われ、患者が容体を悪化させるケースも出ている。

臓器移植法は、臓器売買やその要求・約束などを禁止しており、国外犯規定もある。国際移植学会も2008年、臓器売買について「公平、正義、人間の尊厳の尊重といった原則を踏みにじるため禁止されるべきである」との「イスタンブール宣言」を出している。

NPOは「難病患者支援の会」(東京都目黒区)。ホームページによると、03年から臓器移植を希望する患者に中国など海外の病院を紹介し、死体からの移植を中心にこれまで百数十人の移植に関与したとされる。腎移植の場合、患者から2000万円前後の費用を受け取っている。

読売新聞は、NPO実質代表の男性(62)(横浜市)がコーディネーターのトルコ人男性(58)とやりとりする場面など複数の録音・録画記録を入手し、NPO関係者や手術を受けた患者からも証言を得た。

記録や証言によると、NPOはコロナ禍などで中国に渡航できなくなった後、トルコ人男性に協力を依頼。昨年12月、トルコ人が手配した中央アジア・キルギスの首都ビシケクの病院に、腎移植を希望する日本人の男女4人を案内した。

NPOは手術費などとして患者1人あたり約8万ドル(約1070万円)を支払うことでトルコ人と合意。このうち約1万5000ドルが臓器の対価となる「ドナー費用」で、手術前にホテルなどでNPOからトルコ人に支払われていた。

4人のうち最初に手術を受けたのは関西在住の女性(58)だった。ドナーはウクライナ人女性で、臓器提供の見返りに1万5000ドル近くを受け取り、周囲に「娘の学費を支払った」と話しているという。

 移植を受けた女性は術後に一時重篤となり、NPOとは別ルートで同じ病院に来て移植手術を受けたイスラエル人は死亡した。これを受け、残りの日本人への手術は中止された。

今年6月、NPOとトルコ人はオンラインで打ち合わせを実施。手術を受けられなかった3人の「ドナー費用」計4万5000ドルがNPOからトルコ人に支払い済みで、宙に浮いた状態にあることを確認し、互いに「解決しましょう」などと語り合っていた。

トルコ人は17年、臓器売買に関与した疑いでウクライナ当局に逮捕され、今も公判が続く人物だった。この事件でもドナーはウクライナ人で、臓器の対価は1万3000~1万5000ドルと指摘されていた。

NPO実質代表の男性は取材に文書で回答し、ドナーへの支払いについて「関与していないので分からない」とした上で、「NPOは入退院の手続き、患者の身の回りの世話などのサポート以外は一切、関与していない」と説明した。

厚生労働省はNPOの活動について「違法性の有無は警察が判断するものだが、疑わしいケースがあれば本省としても情報の収集に努める」としている。

仲介NPOの実態調査を
臓器売買が世界各国で禁止されている理由は、仮にドナーが健康上のリスクや報酬に納得していたとしても、そうまでしてお金を作らざるを得ない人の弱い立場につけ込む行為で、極めて非人道的だからだ。

NPO法人「難病患者支援の会」が関与した生体腎移植のドナーは、お金を必要としているウクライナ人だった。過去に臓器売買に関与した疑いで摘発されたトルコ人も関わっている。

手術が行われたのは中央アジアの途上国などで、医療体制や手続きには不透明な点が多い。手術後に患者が重篤に陥ったケースもある。患者とドナーの命が危険にさらされている。

民間団体の仲介による海外渡航移植は、過去にも問題化してきたが、抜本的な対策は講じられてこなかった。警察が臓器移植法違反容疑などを視野に捜査したこともあるが、現場が海外で証拠集めが難しく、立件は見送られている。

現状を放置してはならない。国は「支援の会」の活動の実態について調査するとともに、こうした団体を管理する方策を考える必要がある。

原文出處 讀賣新聞