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韓国、物流・公共交通全面停止の危機 中国が物資供給を制限


韓国で貨物用ディーゼル車の走行に必要な尿素水の供給が急減し、年内にも物流や公共交通機関が全面停止する危機を迎えている。原料の主要調達先だった中国が先月以降、輸出を事実上制限したためだ。米国とともに対中強硬姿勢を示すオーストラリアに中国が反発、豪州産石炭の輸入を止めたことが背景にあり、韓国に米中貿易戦争の〝流れ弾〟が直撃した形となった。

「あと10日ほどで尿素水の生産が全面中断する。月末までには供給が滞り、12月中旬以降は物流がマヒする」。国民大のクォン・ヨンジュ教授は8日、韓国メディアを通じ、韓国国内の産業全体が年内に停止するとの見通しを示した。

尿素水は、ディーゼル貨物車の排ガスの浄化に使われる。韓国国内の車両約200万台は、一定の走行距離ごとに尿素水を充塡(じゅうてん)しなければ、走行を停止する装置が取り付けられている。主要公共交通である路線バスも、5万台のうち約2万台が対象になるという。

原料の尿素を国内生産する日本と異なり、韓国は97%以上を中国に依存してきた。しかし、中国は10月中旬、輸出手続きを変更し、事実上の輸出規制を実施。尿素水の供給減少を受け、韓国国内の給油所は貨物車が長蛇の列を作り、オンラインでは従来の10倍超の価格で取引されている。

中国の輸出規制は、豪州との関係悪化が背景にある。新型コロナウイルスの起源調査や香港問題で米国と足並みを合わせ強硬姿勢を示した豪州に対し、中国は昨秋以降、石炭輸入を停止。尿素の原料となる石炭の供給が中国国内でも不足し、今回の事態に至った。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は8日、「海外の物量を確保するための外交努力に総力を挙げてほしい」と指示したが、同日発表されたベトナムからの緊急輸入分は国内消費量の1日分にも満たないなど、必要量確保の見通しは立っていない。韓国政府は、不純物が多い他用途の尿素水を車両用に転換利用する実験にも着手した。

政府の初期対応の遅れに批判が強まっており、金富謙(キム・ブギョム)首相は8日の国会質疑で「深く反省している」と陳謝した。中央日報は社説で、2019年の日本の対韓国輸出管理厳格化措置に言及。「半導体産業がぐらつくほどの大きな危機を体験しながら、特定国への輸入依存度が過度に高い品目に対し対策を講じていなかった」と政府を非難した。

原文出處 產經新聞