戦艦大和を建造した呉海軍工廠(こうしょう)の跡地にあり、地元のシンボルだった日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区(日鉄呉、広島県呉市)の閉鎖方針に伴い、「水」をめぐって思わぬ問題が持ち上がっている。
工業用水の大口契約先だった製鉄所がなくなると、他の企業の料金負担が大幅に増えるかもしれないからだ。10年後に最大3倍になるおそれもあり、企業側は悲鳴を上げている。
問題となっているのは、県が運営する「太田川東部工業用水1期事業」。広島市や呉市などに拠点がある6社が利用し、このうち日鉄呉は1日あたりの契約使用量が11万6500立方メートルで全体の6割を占める。
しかし、日本製鉄が昨年2月に大規模なリストラを発表。日鉄呉の高炉は今年9月末に止められ、約60年の歴史に幕を閉じた。2023年9月末には全面閉鎖される予定だ。
県は工業用水道事業法などに基づき、設備の維持管理費などのコストを賄えるよう水道料金を設定している。大口の契約先を失い、水道事業の収支見直しを迫られた県は今年6月、利用企業に対し、日鉄呉が2年後に全面閉鎖した場合の収支の見通しを示した。
そこで示されたデータは、料金収入が大幅に減ることから1社あたりの負担割合を増やさざるをえず、10年後の31年度には最大で約3倍になりうる内容だった。
原文出處 朝日新聞