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家族や友人が突然姿を消した 遺体に数字、極秘写真が明かす拷問の跡


体をよじって叫ぶ血まみれの人。毛布にくるまれた遺体を運ぶ半裸の男たち。フランスで暮らすシリア人画家ナジャ・ブカイ(51)が、母国の治安機関の施設で目撃した情景を刻んだ作品は150点近くになる。

アサド政権下の拘束施設で日々、目にした拷問や収容者の様子などを描いたという。

「こんな絵を世に出したくはなかった。『恐れずに記録すべきだ』という友人の励ましがなければ」

2010年末、北アフリカのチュニジアで始まった民主化運動「アラブの春」はリビア、エジプトでも独裁政権を倒し、11年3月にはシリアに波及した。

「シリアでも自由な選挙を実施するんだ」。首都ダマスカスの大学で美術教師だったナジャも熱狂してデモに加わり、アサド政権の権威主義支配に抗議の声を上げた。

しかし、シリアの「春」は暗転した。武力弾圧を強めるアサド政権と、武装を始めた反政権勢力の争いはエスカレートし、12年6月には国連幹部が「内戦状態にある」と認定するまでに。ナジャがダマスカス近郊の政権軍の検問所で拘束されたのはそのころだった。

連行された施設の地下にある雑居房は5メートル×3メートルほどの広さで、下着姿の男性約70人が押し込められていた。窓はなく、高さ約2メートルの天井部にいくつかの穴があいていた。そこからは、光とともに液体が顔にしたたり落ちてきた。「なんだろう」と確かめると、上の階で倒れた人から流れる血だった。

ダマスカスの夏の平均気温は30度を超える。血とうみの臭いが立ちこめる房で、収容者の多くは疥癬(かいせん)や下痢を患っていた。

房を出てトイレに行けるのは1日に2回のみ。その時に歩いた廊下では、収容者たちが壁沿いに両手を上に縛られてつるされたり、電気ショックの拷問を受けたりしていた。

原文出處 朝日新聞