衆院選では、2012年に初当選し、当選3回となる自民党候補者74人の戦いに注目が集まっている。過去3回は安倍晋三元首相のもと、野党が分裂する「安倍1強」で勝ってきた。今回、安倍氏は去り、各地で「野党共闘」も進むなど苦戦が予想される候補者も少なくない。「3回生」の勝敗が自民党の勝敗に直結しかねないだけに、党幹部も危機感を募らせている。
4選を目指す自民前職の冨樫博之氏は19日、秋田市で街頭に立ち、「岸田政権のもと数十兆円のコロナ対策、しっかり対策を打っていく」と声を張り上げた。
同日夕の演説会には、岸田文雄首相と、地方で人気の高い石破茂元幹事長がそろって応援に駆けつける予定だった。しかし、北朝鮮のミサイル発射の対応で首相は秋田入りをキャンセル。石破氏は「危機管理上、首相は東京に戻りました」と演説で説明した。
選挙区の対決相手は、立憲民主党前職で当選5回の寺田学氏。前回と違い、共産党は今回候補者を立てておらず、与野党の一騎打ちの構図になった。実現しなかったが、公示日に首相と石破氏が同時に応援に入るという重視ぶりは、危機感の裏返しでもある。
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首相は衆院選の勝敗ラインについて、自公の「与党で過半数」という目標を掲げる。ただ、政権発足直後の衆院選だけに、議席を減らせば、今後の政権運営に影響を与えかねない。
勝敗のカギを握るのが「3回生」だ。民主党から政権を奪還した12年の衆院選で自民党から初めて国会議員に当選し、「1強多弱」とされるなかで選挙のたびに連戦連勝した第2次安倍政権下で、当選を重ねてきた。人数も多く、今回の衆院選では、党公認候補336人のうち2割にあたる74人いる。
ただ、ベテラン議員に比べて選挙基盤が弱い候補が多い。しかも、不祥事を起こす議員も相次いだことから、党内で「魔の3回生」とも呼ばれている。
朝日新聞の調査では、岸田政権の発足直後の支持率は45%と低い水準だ。衆院が解散される直前の14日の派閥会合で、麻生太郎副総裁は「これまでの3回はいずれも追い風の選挙だった。『気をつけよう暗い夜道と3回生』と私はよく言っている」と戒めた。「3回生」の一人は「初めて風が吹かない選挙に直面した。淘汰(とうた)の局面に来ているのかもしれない」と不安を口にする。
原文出處 朝日新聞