真鍋淑郎さん(90)のノーベル物理学賞の受賞が決まった。1931年に愛媛県で生まれた真鍋さんは祖父や父のように医師になるつもりだったが、「緊急時に頭に血が上る性格で、向かない」と思い直し、地球物理学の道に進んだという。
東大大学院を修了後、活躍の場を求め58年に渡米。米気象局やプリンストン大などで気候変動のメカニズムを解明する研究に取り組んだ。67年、大気中の二酸化炭素(CO2)が増えると地表の温度が上昇するということを、コンピューターを使い、世界で初めて数値で示した。
自身が開発した、気候を予測する仕組みについて、後年のインタビューで「天気予報と考え方は同じ」と語った。天気予報では世界を何十万個ものマス目で区切り、それぞれに気温や気圧などの数値を与え、変化を計算していく。「同じようなことを海や陸でもやって予測する」と解説した。
96年に朝日賞を受賞。当時、「世界で最もよくスーパーコンピューターを使う男」と呼ばれたが、「自然は無限に複雑。複雑さを競ったらスーパーコンピューターでも勝てない。それをいかに単純化するか、本質をどうつかまえるか。生け花のようなバランスが大事だ」と語っていた。過去には「無駄を省いて、いかに美を追究するか。日本人に向いている仕事かもしれない」とも語っている。
原文出處 朝日新聞