新型コロナウイルス感染症の流行が収まらない中、東京五輪の開幕まで約1カ月に迫った。起こりうるリスクは何なのか。回避するためには何が必要なのか。感染症学が専門の国際医療福祉大・松本哲哉教授に聞いた。
――開催されればパンデミック下での五輪・パラリンピックとなります。
パンデミック、すなわち世界中に感染症が広がっている状況下において、各国から多くの人を集めることは通常ありえないことです。
五輪によって東京が「感染の交流」の場になる可能性が考えられるため、開催するのであれば明確な責任体制のもとに感染対策を徹底する必要があります。
また、国内の医療提供体制が逼迫(ひっぱく)した状況に陥らないようにリバウンドも抑えておくことが大切です。
――どんな人がウイルスを広げると考えられますか。
選手よりも関係者の行動が気になるところです。
関係者にはチームをサポートする人たちだけでなく、各国のVIPやメディア関係者などさまざまな人たちが含まれます。
選手は良い成績を残すために慎重な行動を取るでしょうし、行動範囲も限定されています。すでにワクチンを接種した人も多いでしょうし、感染を広げるリスクは低いでしょう。
しかし、関係者は宿泊場所はある程度、限定されており、GPSで行動を管理されているとはいえ、行動の制限に法的強制力があるわけではないので、どこまで管理を徹底できるのか疑問です。
プレーブック(第2版)では入国後2週間たてば公共交通機関も使っていいことになっており、国内で一般の人と接触するリスクもあると思います。
まつもと・てつや 1962年、長崎県生まれ。長崎大学大学院修了後、米ハーバード大留学、東邦大講師、東京医科大教授を経て2018年から国際医療福祉大学教授。日本化学療法学会理事長。専門は感染症学、微生物学。
原文出處 朝日新聞