コロナ禍では、ホストクラブなど「夜の街」へ人々の視線が向けられた。だが、同じ風俗でも「性風俗業」の実態はわかりにくい。その収入で生きる女性の顔も、見えてこない。あるいは社会の側が、見ようとしていないのか。性風俗をどう位置づけるべきか、現場で支援する2人にきいた。
「風テラス」発起人・坂爪真吾さん 「女性の困窮、実態見て」
――「風(ふう)テラス」とはどんな活動をしているのですか。
「性風俗業界で働く女性から、生活や法律の相談をメールやLINE、ツイッターなどを通じ無料で受け、必要に応じて弁護士やソーシャルワーカーにつなぎます。2020年4月の緊急事態宣言以降、相談が激増しました。19年には年間の相談者が874人だったのに、宣言の出た4月からの3カ月間で、1493人に上ったのです」
――激増した背景は?
「性風俗業界には、生活に困窮するシングルマザーや非正規雇用の女性などが多く働いています。宣言下ではコロナ感染を恐れた男性客が敬遠したため、収入の道が途絶えた。家賃が払えず、借金が返せず、子どもを養えない。そう泣きじゃくり、自殺を口走る女性の話を、相談員が傾聴し、生活を立て直すための方法や生活保護の申請の仕方を助言しています」
――性風俗で働く女性はどのくらいいるのですか。
「公的な統計は存在しません。しかし風俗情報サイトの出勤情報などから推計すると少なくとも35万人はいるでしょう。相談は、業態で言うとデリバリーヘルス(無店舗派遣型)で働く女性からが多いです」
――著書には性風俗の「是非論や道徳論は脇に置いて」とありますが、簡単には「脇に置けない」問題でもあるのでは。
「それはわかります。ただ、是非論や道徳論だけがずっと語られ続ける理由は、彼女たちが置かれた困難が世間に見えていないからでしょう。ひと昔前にはホームレスも、単なる『怠け者』『個人の道徳の問題』と思われていましたが、現場の実態が報道されることで、社会構造のいびつさが根にあり、福祉の問題という認識が深まりました」
――彼女たちが置かれた困難について教えてください。
記事後半では、性風俗業界に持続化給付金は出さない、という国の方針をめぐって、坂爪真吾さんが「法律を守って税金を納めている事業者には出すべきである」と主張します。一方で、NPO法人ほっとプラス理事・藤田孝典さんは「出せば、国が性風俗産業を認めることになる」と語っています。
原文出處 朝日新聞