新型コロナウイルスのインド型変異株は感染力が高い可能性が指摘され、国内でも少しずつ感染者が増えている。今月下旬にインドから帰国し、ホテルで待機中の20代男性が朝日新聞の取材に応じ、インドで目の当たりにした「異次元の感染力」、そして混乱の中での出国劇について語った。
東京都の会社員の男性は3月、インドの首都ニューデリーに赴任した。
当初の感染状況はまだ深刻ではなく、街の通りは多くの人で混雑していた。
飛行機に乗って郡部に旅行すると、モスクの前は巡礼の人であふれていた。
4月に入ると、感染者が徐々に増え、夜間外出禁止令が出た。
同僚1人が感染したが、男性は検査を受けて陰性で、職場への出勤も続けた。
「感染力が異次元だ」
しかし、4月中旬、ニューデリーでロックダウンが始まったころ、男性を取り巻く環境は一変した。
男性の職場では、現地スタッフを含め20人以上が発熱やせきの症状を訴え始めた。
最初は軽症でも、1週間ほどすると突然悪化する例が相次いだ。
40代のインド人は亡くなり、よく顔を合わせていた上司の日本人も一時重症となった。
他の部署では職員の8割が感染したとも聞かされた。
「感染力が異次元だ」。同僚らとは、コロナが「more personal(我がことになった)」と語り合い、職場は全員が出勤停止となった。
恐怖でPCR検査場に近づけない
男性に「すぐそばに死がある」と思わせたのは、インドの病院だ。感染者が廊下や外にまであふれ、酸素が不足していると毎日テレビで流された。
「異国の地で、感染すれば誰も助けてくれないかもという恐怖があった」
原文出處 朝日新聞