台湾東部の花蓮県で50人が死亡した2日の列車脱線事故を受け、運行している公営鉄道「台湾鉄路管理局」(台鉄)の管理体制に批判の声が上がっている。3年前にも同じ路線で、速度超過による列車脱線で18人が死亡した事故が起きたにもかかわらず、再発を防げなかった。「台鉄を日本のJRのように民営化すべきだ」との指摘が相次いでいる。
台湾の中華軌道車両工業発展協会理事長で与党、民主進歩党の元立法委員(国会議員)、蔡煌瑯(さい・こうろう)氏は、民営化について、「台鉄の名誉を挽回するため、民間資金と経営戦略を積極的に受け入れ、台鉄の組織や体質を刷新すべきだ」と地元メディアの取材に答えた。
また、交通部(国土交通省に相当)次官の王国材氏も事故後の記者会見で「個人的見解だ」と断りながらも、「(台鉄の)民営化に賛成する」と表明した。
台鉄は、日本統治時代に建設された台湾総督府鉄道を引き継ぎ、1000キロ以上の在来線鉄道網を運行しており、台湾当局の管理下にある公営事業として運営されている。一方で、2007年に開業した台湾高速鉄道(台湾新幹線)は、建設計画の当初から、民営企業が運営を担ってきた。
高鉄に対して台鉄は「サービスが悪い」「遅延するし危険だ」などと利用者に不評で、硬直した体質もたびたび批判されてきた。
今回の脱線事故の直接的な原因は、台鉄が発注した土木工事の作業車が斜面から線路上に滑り落ちたことだが、「管理、監督の責任を果たしていない」「民間企業なら落下防止の柵を事前に作ったはずだ」といった指摘も相次いでいる。
楊合進・文化大学准教授は6日付の台湾紙、聯合報に寄稿し、1980年代の日本の国鉄民営化の事例を紹介。「民営化後、経営体質も遅延率も事故率も改善された」と説明した。その上で「台鉄も民営化を決断する時だ」と主張した。
しかし、こうした民営化推進論に対し、反対意見も根強い。台湾鉄道労働組合の理事長、王傑氏は「事故対応の時期に民営化論が出ることは職員の士気に影響する」「民営化しても問題は解決されない」と反論した。野党、中国国民党の幹部は、「民営化の議論は民進党による事故の責任逃れだ」とも批判している。
原文出處 產經新聞