日本中央競馬会(JRA)は6日、滋賀県栗東市と茨城県美浦村にある競走馬のトレーニングセンター(トレセン)で働く調教助手や調教師、騎手ら厩舎(きゅうしゃ)関係者165人が、新型コロナウイルス対策で中小事業者などを支援する国の持続化給付金を受給していたと発表した。総額は約1億9000万円に上り、制度の趣旨や目的から逸脱した不適切な受給者は164人。このうち49人が計5163万円を返還し、114人が返還手続き中としている。
JRAによると、調教助手や厩務員らは、新型コロナの影響で管理する馬のレース成績に応じて得られる報酬が減少したなどとして、給付金を受け取っていた。しかし、中央競馬はコロナ下でも無観客で開催を継続。2020年は過去最多のレースを実施し、賞金や手当の減額はなかった。1日の衆院予算委員会で「中央競馬の賞金に由来する収入について、感染症の影響は極めて限定的」との見解を示していたJRAの後藤正幸理事長はこの日、「中央競馬の信頼に関わる問題となり、心よりおわび申し上げる」とコメントした。
2月半ばに不適切受給を指摘した報道を受け、所管する農林水産省がJRAに実態調査を指示した。JRAは全厩舎関係者2748人を対象にアンケートや聞き取り調査を実施。受給者の内訳は、調教助手112人▽厩務員21人▽調教師19人▽騎手13人――だった。地域別では美浦が42人、栗東が123人。副業の飲食店の減収が理由の1人と、体調不良で休職中の1人は返還手続きをしていない。
今回の不適切受給では、馬主でもある大阪市の税理士が申請を指南。「皆様が給付の対象」などとした案内文を配布し、受給額の7~10%の報酬を得ていたとされる。税理士が代表を務める法人が104人の申請に関わったとしている。
6日に千葉県船橋市の中山競馬場で記者会見したJRAの吉田正義常務理事は、昨年10月に事態を把握し、関係者へ注意喚起したと説明。実態調査が遅かったとの指摘については、「事態が広がらないよう注意喚起を優先した」と述べた。受給者への処分に関しては、日本調教師会など所属団体の判断に委ねる方針。申請を指南した税理士に対しては「今後、事情を聴く」とした。
原文出處 每日新聞