長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)で朝鮮人の少年徴用工が劣悪な環境で働かされていたとする韓国の児童用絵本の挿絵が、終戦直後の東京・品川の浮浪児や日中戦争時に中国の密偵を撮影した写真と酷似していることが25日、分かった。軍艦島の元島民らでつくる「真実の歴史を追求する端島島民の会」や産経新聞の調べで判明した。軍艦島とは無関係の写真を基に描いた事実とは異なる挿絵を使うことで、誤った印象を与えた可能性がある。
絵本は尹ムニョン氏が文と絵を描き、2016年に韓国で出版社「ウリ教育」から発刊された「軍艦島-恥ずかしい世界文化遺産」。朝鮮人の少年が軍艦島に強制連行され、45度を超える暑さの中、連日12時間近く働かされたなどと日本の加害性を強調している。日本兵が少年をムチでたたき、朝鮮半島出身者とみられる人が逆さづりにされたシーンもある。
問題の挿絵の一つは、10人以上の少年たちが裸でおりに閉じ込められ、鉄格子に寄りかかっている姿などを描いたもの。端島島民の会の調べによると、この挿絵は昭和52年出版の写真録「日本現代写真史 1945-1970」(平凡社)に収められた浮浪児の写真と構図が酷似している。21年に東京・品川で撮影され、「狩り込みで少年保護所に収容された浮浪児」との説明がある。
さらに、朝鮮人の少年が日本兵から尋問されている絵も12年8月8日に従軍カメラマンが中国で撮影した写真と構図が重なる。この写真は52年出版の「1億人の昭和史10 不許可写真史」(毎日新聞社)に収録されており、「中国軍密偵を調べる憲兵隊 左側は現地採用の通訳」との説明書きがある。
作者の尹氏は産経新聞の取材に対し、絵本は1983年に韓国で出版された「写真記録 日帝の侵略 韓国 中国」の写真を参考にしたとウリ教育を通じて回答し、軍艦島と無関係な資料を基にしたことを認めた。ウリ教育は「ストーリーはフィクションだ」と強調し、「韓国では写真を参考にイラストを描くことは許容されている」と述べた。
元島民の中村陽一さん(82)は「無関係な写真を使って絵本を作るとは、どこまで端島をおとしめれば気が済むのか。絵本の回収、謝罪を求めたい」と強調した。
軍艦島をめぐっては、平成27年の世界文化遺産登録に際し、韓国が官民挙げて反対した経緯がある。
原文出處 產經新聞