ロシアはウクライナで「ハイブリッド戦」を展開している――。日本政府がこう分析し、専門家は「現代戦」の手法と語るハイブリッド戦。その意味とは。スパイが暗躍した過去の戦争とはどう違うのか。そして、日本はどのように備えているのか。
「ハイブリッド戦の手法をとっているともみられる」。ロシアが侵攻を始めた翌2月25日、岸信夫防衛相は会見でこう指摘した。
兆候はあった。昨年12月、SNSで「緊張を生んでいるのは欧米側」との投稿が1日平均3500件近く確認されていた。それを公表した米政府は「欧米がゲリラを送り込んで地元住民を殺害している」との発信も増えたとする。侵攻を正当化する世論誘導を狙った工作とみられている。
ロシアはウクライナ周辺に部隊を集結させたが、侵攻の意図は否定し、一部の撤収を発表したことも。侵攻は、ウクライナ東部の一部を占拠する親ロ派勢力からの要請に応える形で住民保護を名目に始まった。「情報戦や心理戦による揺さぶりが数カ月がかりで行われた」(自衛隊幹部)との見方が強い。
一方、ウクライナ側も情報戦で対抗。「帰りたい」と訴えるロシア兵捕虜の映像をSNSで公表するなどした。支援する米国も、ロシアの狙いを先回りで暴露している。
ハイブリッド戦、「世界が驚いた」きっかけは
ハイブリッドには「複数の方式を組み合わせる」という意味がある。陸海空の軍事力に、サイバー攻撃やSNSによる偽情報など、新旧の手段を多元的に組み合わせる「ハイブリッド戦」は「軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧(あいまい)にした」(防衛大綱)手法だ。
原文出處 朝日新聞